
今年2月、吉林省延吉を訪れたことがきっかけで、中国におけるそろばん教育の発展に強い関心を抱きました。延吉は「そろばん暗算発祥の地」として知られ、現地で目にしたそろばん指導者の工夫を凝らした指導や子どもたちのレベルの高さに、日本も安心していられないと、危機感に似たものも感じました。
中国のそろばん教育の現状をぜひ日本のそろばん関係者と共有したいとの思いから、2025年9月、日本向けに上海そして延吉を巡る視察を実施しました。中国のそろばん教育、ぜひ一緒に旅をしていきましょう!

視察の始まりは、上海 ― エンターテインメント要素を取り入れたそろばん

早朝、眠い目を擦り羽田に集合。中国の入国審査では思いがけなく、あれこれ滞在日程を聞かれたものの、全員無事入国。ホテルにチェックインして、まずは、上海噼里啪啦(ピリパラ)超脳開発を訪問しました。
上海噼里啪啦(ピリパラ)超脳開発は、上海エリアを中心に多数の教室展開しているそろばん教室。以前から、海外のそろばん大会にもよく参加し、とても国際的に門戸を開いている印象がありました。
まず教室に足を踏み入れてびっくり! 大きなキャラクターがお迎えするその空間は、まるで宇宙空間のよう。キッズスペースにあるような遊びの空間、ステージは、まるでエンターテインメント施設。ただ学ぶ場所ではなく、子どもたちが「教室に行くと楽しい!」と思えるような工夫にあふれていました。
訪れた日本の関係者からは、「そろばん教室で、これほどの設備を整えているところは、見たことがない!」と声が上がったほどです。またさすが中国で最も経済が発展している都市・上海、月謝も3ヶ月で日本円で約30万円ほどと、日本では考えられないような高額でした。
私たちの視察に合わせて、教室に通う保護者、子どもたちも集まってくれました。子どもたちが流暢な英語で自己紹介してくれたり、経済力があり、教育熱心な保護者たちからも、そろばんの上達方法に関して突っ込んだ質問も飛んでいました。


延吉で見た地域と文化の力
吉林省延辺州では、政府部門が率先してそろばん教育に力を入れていました。その部門のトップにいる方も、元そろばん選手。ギネス記録を持っているすごい女性です。そろばんで優秀な成績を納めた人材が、政府や主要な金融機関に就職ができる、そんな構造もできていました。
また、検定センターにも訪れ、実際の検定風景も見ることができました。そろばんの連盟が連立する日本に対して、中国にはそろばんの連盟が1つだけ。生徒たちは、オンラインでその検定が受けられます。検定の様子は、連盟本部でもモニタリングされ、オンラインでその場で検定結果もわかります。ITを駆使した方法に、すでにこの方面では日本は遅れをとっていると実感しました。



また、前回も訪問した幼児からそろばん教育を毎日取り入れているそろばん幼稚園、公立小学校では、そろばん選抜クラスも設置。色々な年齢層で、そろばん教育が厚く施されていました。




弥谷拓哉先生の圧倒的な存在感
今回の視察でひときわ注目を集めたのが、弥谷拓哉先生(そろばん日本一)。中国の人気番組「最強大脳」に出演していたことから、現地でも知名度抜群で、多くの子どもたちが彼を知っていました。
各地でフラッシュ暗算や見取り算を披露すると大歓声が起こり、子どもたちの目が一気に輝く瞬間が何度もありました。そろばんを通じた憧れや感動が、国境を越えて共通に存在することを実感させられました。


熱心な質問と長時間の議論
今回の日本からの参加メンバーは、教育・経営・教材開発の第一線で活躍する方々ばかり。視察の合間や交流会では、次々に鋭い質問が飛び交いました。
「どのように先生を育成しているのか?」
「検定制度の公平性をどう担保しているのか?」
「タブレットの導入は子どもの学習意欲や成績向上にどう影響しているのか?」
こうしたやり取りが続き、時には予定時間を大幅に超え、お尻が痛くなるほど座り続けて議論する場面もありました。国境を越えて、同じ教育を志す仲間同士が本気で意見を交わす光景は、今回の視察を象徴する一幕でした。

アットホームな学びと交流
今回の視察団は、お付き合いのある皆様にお声がけして実現しました。
そろばん教室USAの弥谷拓哉先生や高柳一馬先生、株式会社イシドの沼田紀代美社長、朝日プリント社の山田繁社長など、教育や教材、経営の第一線で活躍される方々が集結。互いの経験や思いを率直に語り合う場は、とてもアットホームでありながらも、学びに満ちた時間となりました。

視察を終えて
5日間の視察を通じて感じたのは、中国におけるそろばん教育の規模感と情熱、そしてそこに組み込まれた文化的・社会的な力でした。幼少期からの学びを国家的に整備しつつ、そろばんを固有の文化をして誇りを持たせて伝承する姿は、日本の私たちにとっても新しい示唆に富むものでした。
「そろばんは国境を越える」―大都会・上海でも、地方都市・吉林省延吉でも、楽しそうにそろばんを学ぶ子どもたち。そろばん日本一とは、共通の言語はないけれど、珠を弾く一瞬で、すぐ通じる感覚が生まれる! この言葉の重みを改めて実感できた視察でした。
来年もまた違った嗜好で、中国のそろばん教育をご覧いただける機会を作っていきます。ぜひ期待していてください!

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